伊澤の牧場〜アンチフォーム交友録〜

行き場のない言葉達を放牧しています。勝手に書く。

不安

 このところ、修論を書き進めている。しかし、昨日は一行も書けなかった。書く時間はあったが書けなかった。こんな日が断続的に訪れる。正直、ギリギリだ。毎日自己嫌悪に陥る。院生になった時(もう2年前のことになる)、指導教員N氏に、開口一番「お前は文章が下手くそだ」と言われた。てんでなっていない、と。学部時代は卒論で賞を貰ったこともあり、書くものを評価してくれた人もいたので、多少は文章に自信があった。しかし、僕のプライドは打ち砕かれ続けた。入学以来、僕は自分の指導教員を恐れ、できるだけ怒られないように、ビクビクしながら、文章を書くようになった。「論文は明示的に書かなければならない。論旨が明確で、仮説が検証されていなければ学術的に評価されない。」これが、N氏の教えてくれたことだった。全くその通りだと思う。しかし、僕は残念ながらN氏の課したハードルを乗り越えられなかった。僕の文章は放っておけば冗長で、装飾的で論旨が分裂していくという癖がある。見直していかなければならないと思ってはいたが、修正できなかった。これは自分の甘さだ。否、修正はしていたつもりだったが、全くできていなかったのだと思う。僕の論文は、仮説が検証されていないし、検証のための材料も足りない。今まで何をしてきたのだろうと思う。あまり、書く気が起こらない。ついつい現実逃避をしてしまう。書くべきものは書けず、書かなくてもいいものだけは長々と書けてしまう。結局、やらなければならないことから逃げたいだけなのだと思う。色んな人に不義理をしている。自分の怠け癖や逃げ癖は既に染み付いてしまっていて簡単に抜け出せない。自己嫌悪に陥る。自分は統合失調症なのではないかとネット検索をして更に気が滅入る。気分を変えようと大学のスタジオに行くと、マカを飲むように同期の友人から勧められた。後で購入することにしよう。読点の多い文章を書いて何かを言えた気になってしまうのはとにかくまずい。読点より句点を増やせ!という気持ちで書いていこう。締切が迫る、ますます不安になる。不安を解消するためには書かなければならない。書けない自分に自己嫌悪。締切すぐだぞさあペンを。なんだかラップみたいになってしまった。

 自分は全然できる人間じゃないし、不器用で要領が悪い人間だと思う。恵まれた環境を全然活かしきれていない。いつから呪詛のように卑屈な言葉を書き連ねるようになってしまったんだろう。もう少し一貫性のある言葉を紡げるように頑張りたい。プレッシャーを様々な方向からかけられている気がする。いや、もしかしたら。普通の人がプレッシャーと感じないような事さえもプレッシャーに感じてしまうのかも、自分は。生きてるってしんどいことだ。ちゃんとした人の身振りを身につけて生きることが時々しんどくなる。ちゃんとした大人を演じることはそんなに難しいことじゃないはずなのに、今の自分にはとてつもなく難しいことのように感じている。今は、毎日が辛い。もちろん楽しい時は楽しいし、そういえば、演劇をやっている時は楽しいし、美味しいものを食べてる時は楽しいし、歌っている時は楽しい。文章を書いてる時も楽しい時が多い。でも今のこの状況は苦痛だ。全ては自己責任なのだ。自分が選んだ結果で人生は決まるのだ。自分が楽しもうとすればそれは楽しくなるかもしれない。今の境遇も自分が選んだ結果なのだ。それに納得して進める人は強い人だなあと思う。自分で決められる人は強い。また卑屈になりかけている。この辺で書くのをやめておこう。自分にとっては文章なんて、自分の死後発掘される日記のような存在で良いと思っている。全く何を書いているか分からないのはマズイが、多少のブレはあっていいし破綻があっていい。窓から見える風景が、徐々に光を取り戻しつつある。晴れてきた。気温も上がってきた。今日は少し書けそうだ。